よくあるご質問
FAQ

よくお寄せいただくご質問をまとめております。お客様の不安を取り除き、寄り添いながら、お悩みの課題を表面設計の力で解決します。

表面熱処理

  • 表面熱処理とはどのような技術で、目的はどのようなものですか?
    表面熱処理とは、JISでは「金属製品の表面に所要の性質を付与する目的で行う熱処理」 と定義されています。所要の性質とは主に、耐摩耗性や耐疲労性、耐焼付き性、耐食性などが挙げられます。鋼を対象とした表面熱処理は、表面だけ過熱して焼入れ硬化させる「表面焼入れ」と、異種元素を加熱によって表面から浸透させる「熱拡散処理」に大別できます。
  • 表面焼入れの特徴と種類について教えてください。
    表面焼入れとは、鋼の変態点以上(オーステナイト領域)まで急速に加熱し、内部温度が上昇する前に急速に冷却して表面だけ硬化させる手法です。表面焼入れ法には炎焼入れ、高周波焼入れ、電子ビーム焼入れ、レーザ焼入れの4種類があります。表面焼入れの最大の特徴は、被処理物が耐摩耗性(表面)と靭性(内部)を兼ね備えていることです。しかも、焼入れ硬化層には高い圧縮残留応力が存在するため、耐疲労性も非常に優れています。4種の表面焼入れの中で最も多用されているのが「高周波焼入れ」で、主にS45CやSCM435など機械構造用鋼を対象として、シャフトや歯車などに採用されています。硬化層硬さを高める目的で、窒化処理との併用も適用されていますが、これは窒素が炭素と同様に固溶硬化に寄与することを利用したものです。
  • 熱拡散処理の特徴や適用例について教えてください。
    熱拡散処理とは、異種元素を加熱によって表面から浸透させる処理で、炭素(C)や窒素(N)など非金属元素の拡散によるものと、炭化物形成元素(V、Ti)などの金属元素の拡散によるものに大別されます。中でも広範に応用される処理が、非金属拡散処理である浸炭 • 浸炭窒化処理です。炭素は鋼を焼入れ硬化させるためには不可欠な元素で、その含有量が多いほど、高い焼入れ硬さが得られます。浸炭とは、炭素量の少ない鋼を浸炭剤中で高温(900℃くらい)に加熱し、表層の炭素量を増加させることです。浸炭処理した鋼を焼入れすれば、浸炭層は硬化して耐摩耗性が付与され、内部の非浸炭箇所は硬化しないため靭性に富んでいます。歯車など機械部品をはじめ自動車部品などに広く適用されています。また、浸炭窒化は炭素と同時に窒素も拡散浸透させる処理で、耐疲労性の付加を主目的としています。
  • 窒化処理の特徴・種類について教えてください。
    浸炭処理と同様に非金属拡散処理であり、窒素を拡散浸透させる処理です。工業的にはガス窒化から始まり、塩浴を用いる方法やプラズマを用いる方法など多くの方法が開発され、広範な分野で採用されています。ガス窒化は単純にはアンモニアガス中で加熱します。処理プロセスには500~550℃で所定時間加熱する方法、500~520℃で十分に窒素濃度を高めた後に550~600℃で拡散させる方法などがあります。プラズマ(イオン)窒化は、減圧した真空槽内で処理物を陰極、炉体または別電極を陽極とし、窒素+水素の減圧雰囲気にして数百Vの電圧を印加します。陰極側で生じたグロー放電中に存在するイオン(N+およびH+(が、陰極である処理物に高速で衝突します。処理物はイオン衝撃によって昇温し、同時にNはFeと反応してFe窒化物を生成し、さらには拡散して窒化が進行します。ガス軟窒化は、窒素と同時に炭素を拡散浸透させる処理で、窒化の主な目的が耐摩耗性の向上であるのに対して、耐疲労性の向上が主な目的となります。炭素も同時に拡散させるために一般的な窒化温度よりも高めの560~580℃(通常は570℃)で実施されます。一般的な雰囲気は浸炭性ガスにNH3ガスを添加したものです。塩浴軟窒化は、迅速窒化を目的として開発されたもので、NaCNOやKCNOなどの青酸塩を主体とした塩浴中で加熱します。代表的手法として多用されてきたタフトライド処理は塩浴にNaCNとKCNOの混合塩を用いて、空気を吹き込んで反応を促進させます。浸硫窒化は、耐摩耗性と同時に摺動特性を付加する目的で硫黄(S)も同時に拡散浸透させる処理です。

WPC処理

  • WPC処理とはどのような処理ですか?
    WPC処理とは、金属製品の表面に数十㎛の微粒子(メディア)を圧縮性の気体に混合して高速衝突させることで、金属表面に無数の微小なディンプルを形成するとともに、同時に表面層のみを強化する冷間加工の一種です。ショットピーニングの一種に位置付けられますが、WPC処理は従来のショットピーニングよりも格段に微細な直径数十㎛程度の粒子を100m/sec以上の高速で投射する一種のショットピーニングです。ただし、微粒子を用いることから、従来のショットピーニングでは顕在化しなかった様々な現象が部品等の表面近傍で起こります。加工面のディンプルはオイル溜まりを形成し摩擦摩耗特性を大幅に向上させます。また、大きな圧縮残留応力の付与や結晶粒の微細化により疲労強度の向上を実現します。
  • WPC処理で付加される表面機能にはどのようなものがありますか?
    機能の一つとして摺動性の向上があります。低フリクションで滑る表面を創製できるため、軸受やシャフト、ピストン、レール、スライダーなど幅広い用途があります。また、良好な離型性を付与するため、食品機械や、樹脂、ゴムなどの金型などにも適用できます。流体の流れを制御できることからは流路やシリンジ、流体軸受などに、表面を強化できることからは歯車やスプリング、ボルト、金型、医療機器などに、光の反射を制御できることからは導光板や光学フィルム、防舷パネルなどにも採用されています。

コーティング

  • ドライコーティングという言葉をよく聞きますが、どのようなコーティングのことでしょうか?
    多くの成膜技術の中でも特に生成可能な膜種の多いPVD法とCVD法を総称して「ドライコーティング」と呼ぶことが多いようです。これらは気相(ガス)状態にした物質を膜生成に利用しています。PVD(Physical Vapor Deposition)は物理気相蒸着法と呼ばれるもので、一般には物質の蒸気圧をそのまま利用した真空蒸着、イオン衝撃を利用するスパッタリング、蒸発した気体をイオン化するイオンプレーティングに分類できます。いずれも減圧低温成膜技術であり、膜生成は、膜原料の真空中における蒸発気体もしくはスパッタ粒子によるもののため、基本的には処理物を加熱する必要はありません。そのため、適用基材の範囲が広いこと、得られる被膜表面が滑らかなこと、などを特徴としています。CVD(Chemical Vapor Deposition)は化学気相蒸着法と呼ばれるもので、複数のガス同士の相互反応によって被膜を生成するものです。複数のガスによる熱平衡反応によって膜生成する熱CVD、プラズマの反応促進作用を利用してガスの反応温度を低温化したプラズマCVD、紫外線やレーザ校による光分解作用を利用した光CVDなどがあります。反応ガスの組み合わせによって種々の被膜が得られることから、主に金型や治工具対象として、炭化物、窒化物、酸化物などの硬質膜の生成にも広く利用されています。
  • PVD、CVDによってどのような膜が多く成膜されているのでしょうか?
    PVDやCVDを用いてた膜種としては、耐摩耗性や摺動特性の付与を目的とした「硬質膜」が製膜されることが多いようです。硬質膜を成膜することで、金型や切削工具、機械部品、自動車部品などに共通して求められる耐摩耗性の向上(表面硬化)や、摺動特性の向上(摩擦係数の低減)のほか、耐食性の向上、耐熱性の向上などを実現できます。日本で最初に工業用途で応用された硬質膜としては、硬質で摩擦係数低減効果があるなどの理由から、TiN(窒化チタン)膜が切削工具に採用されました。さらに耐高温酸化性被膜であるTiAlN(窒化チタンアルミ)膜など種々のTi(チタン)系硬質膜の適用例が増加しているほか、Cr(クロム)系硬質膜やダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜なども適用が進んでいます。クロム系硬質膜を代表するものはクロムと窒素の化合物です。CrとNの組成比は成膜技術によって制御でき、その組成比によって900Hv~1800Hvの広範な硬さに制御できます。潤滑下での摺動特性が期待されるほか、耐高温酸化特性に優れます。
  • DLC膜とはどのようなコーティングですか?
    DLCはDiamond-Like-Carbonの略で、ダイヤモンドに類似した硬さ(耐摩耗性)や固体潤滑特性(低摩擦性)などを有する炭素膜を意味します。DLC膜の成膜方法は炭素の供給源によって、固体の黒煙を用いる方法と、炭化水素系ガスを用いる方法に大別されます。前者ではPVD法に属するマグネトロンスパッタリング法やアーク蒸発法が利用され、後者では真空槽内で熱電子衝撃、RFプラズマまたはDCプラズマなどの作用によってガスをイオン化して基材に叩きつけて被膜を堆積させるものです。DLC工業会によると、DLCの組成(sp3比率(硬さ)と水素含有量など)から、タイプⅠ(ta-C(:アーク法、HiPIMS法、タイプⅡ(ta-C:H):イオン化蒸着法(高硬度)、タイプⅢ(a-C):HiPIMS法、スパッタリング法、タイプⅣ(a-C:H):イオン化蒸着法:プラズマCVD、タイプⅤ(GLC):スパッタリング法、タイプⅥ(PLC):プラズマCVD、の6タイプに分類されています。