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微粒子ピーニングは「マイクロフォージング」 ― 表面を鍛えて金属組織を微細化する ―
微粒子ピーニングの効果といえば、大きな圧縮残留応力の付与や、加工硬化による表面硬度の上昇を思い浮かべる方が多いと思います。
しかし、微粒子ピーニングの面白さはそれだけではありません。もう一つ重要なのが、表面近傍の金属組織そのものを微細化する作用です。
✓ 微粒子の衝突で金属組織が変わる
数十μm程度の微粒子を高速で繰り返し衝突させると、表面のごく浅い領域に大きな塑性変形が集中します。その結果、多量の転位が導入され、さらに加工が進むことで金属組織の微細化が起こります。
実際に、微粒子ピーニング処理によって浸炭焼入れ鋼の最表面にナノ結晶組織が形成される※1ことや、Ti-6Al-4V合金において表面近傍に著しい塑性変形と転位密度の増加が生じ、動的再結晶による組織微細化が起きる※2ことが報告されています。
つまり微粒子ピーニングでは、単に表面を硬くしているだけではなく、金属組織そのものをつくり変えているのです。
✓ 表面を「鍛える」マイクロフォージング
金属材料は古くから、鍛造や鍛錬によって強い塑性変形を与え、金属組織を変化させることで強度や靭性を高めてきました。
微粒子ピーニングでも、一つ一つの粒子を微小なハンマーと考えれば、無数のハンマーで表面を繰り返し鍛えていると見ることができます。
そこで私たちは、この作用を
「マイクロフォージング(Micro Forging=微小な鍛造)」
と呼んでいます。
微粒子ピーニングは、圧縮残留応力を与える表面処理法であると同時に、表面に繰り返し強加工を与える金属組織制御技術と言えるのです。
✓ 材料全体ではなく、必要な表面だけを鍛える
疲労や摩耗、腐食など、部品の寿命を左右する損傷の多くは表面から始まります。
したがって、材料全体を鍛えるのではなく、損傷の起点となる表面を集中的に鍛えるという考え方は、とても合理的なのです。
ごく表面を鍛え、金属組織を変えることで、部品全体の耐久性を高める。
さらに応用として、マイクロフォージングによって基材表面を強化したうえで、DLCやTiN、CrNなどのコーティングを組み合わせる複合処理も考えられます。鍛えた基材の上に、低摩擦性や耐摩耗性など別の機能を付与することで、それぞれの長所を生かした表面設計が可能になります。
つまり、「表面を鍛え、その上に必要な機能を付与する」。
微粒子ピーニングをマイクロフォージングと捉えることで、単独の表面処理にとどまらない、より広い表面設計の可能性が見えてきます。

SCr420浸炭焼入れ鋼の表面に微粒子ピーニングによって形成されたナノ結晶の透過電子顕微鏡写真※1
※1 高木 眞一 ら,微粒子ピーニングによるSCr420浸炭焼入れ鋼表面のナノ結晶化,鉄と鋼 Vol.92 (2006) No.5
※2 T. Morita et, Influences of particle collision treatments on surface characteristics and fatigue strength of Ti-6Al-4V alloy, Results in Materials 7 (2020) 100128
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