2024.08.01  金属製品の応力について

オープンラボ X線残留応力測定装置

●金属製品の応力について

金属製品の製造や加工時には、さまざまな応力が発生します。加工時の応力、溶接時の応力、熱応力などが一般的に聞かれるものです。また、引張応力や圧縮応力という用語もよく登場します。またX線を使った応力測定も現実に行われております。

応力について視覚化できることがありましたので、技術ブログとして共有したいと思います。
今回使用した素材はインコネル718の積層造形品です。

●インコネル718とは

インコネル718はニッケルを多く含む非常に高価な材料で、その性能は高温域で特に優れています。
しかし、加工が非常に難しい超難削材とも呼ばれ、加工にかかる工具代も非常にかさみます。
このため、積層造形によるメリットが大きい材料の一つと言われています。

積層造形品は、金属を溶かして層を重ねる溶接のような方法で製造されるため、内部に応力が蓄積されます。
通常インコネル718の積層造形品には熱処理を施します。
具体的には、固溶化処理と時効硬化処理が行われます。

 

●実験結果の比較

ここで、「百聞は一見に如かず」ということで、実際に熱処理前と熱処理後のインコネル718の積層造形品をワイヤーカットしてみました。
これは、クリープ試験のための試験片を採取するために行ったものです。

インコネル718

【写真 上】インコネル718の熱処理前
【写真 下】インコネル718の熱処理後

1. 熱処理前のものは、ワイヤーカット後にすぐに反りが見られました。これは、積層造形品が製造時に蓄積した応力が、カット後に自由に動けるようになった結果です。


2. 一方、適切な熱処理を施した積層造形品には、大きな反りは見られませんでした。

 

●結論

今回の実験を通じて、インコネル718の積層造形品における応力の存在を視覚化することができました。
また熱処理を適切に行うことで、内部応力を低減し、加工後の変形を防ぐことが可能です。
高価で加工が難しい材料であるインコネル718においても、熱処理の効果は非常に大きいことが分かると思います。

『表面設計コンソーシアム』【オープンラボ】では、今回のように破壊検査をすることなく製品の応力をその場で測定することができます。
さらに、熱処理やコーティングなど単一の技術では対応できない表面に関わるユーザーのニーズ・オーダー(表面課題)に対し、計測・評価を経た根拠のある合理的で最適なバリューコストを高める表面設計ソリューションや、各種の表面損傷に対して寿命予測が可能な表面設計ソリューションを開発し提供する「表面技術のスペシャリスト集団」が問題の解決に導きます。

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表面設計コンソーシアムメンバー『問題解決熱処理工場 武藤工業株式会社』