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ステンレスはなぜ錆びる? ― 不働態皮膜と熱履歴から考える耐食性 ―
ステンレス鋼は「錆びない鋼」と思われがちですが、実際には使用環境や加工・熱処理の履歴によって錆が発生することがあります。
その理由を理解するうえで重要なのが、表面を覆っている不働態皮膜です。
✓ ステンレスを守っているのは「不働態皮膜」
ステンレス鋼には約13%以上のクロム(Cr)が含まれており、このクロムが表面に厚さ数nmの緻密な水酸化物と酸化物からなる不働態皮膜を形成します。
この皮膜が金属内部を腐食環境から守っているため、ステンレス鋼は優れた耐食性を示します。逆に言えば、不働態皮膜が正常に形成・維持できなくなると、ステンレスでも錆びるということです。
✓ 熱を加えると耐食性が低下することがある
SUS304などのオーステナイト系ステンレス鋼では、熱処理や溶接によって特定の温度域にさらされると、鋭敏化と呼ばれる現象が起こることがあります。
特に500~700℃の温度域で加熱されると鋭敏化は起きやすくなります。これは、オーステナイトの結晶粒界にクロムの炭化物が析出し、その周囲では固溶するクロム濃度が低下するために、十分な不働態皮膜を形成できなくなる現象です。
そのためクロム濃度が低下した粒界を起点として腐食が進みやすくなるのです。
つまり、ステンレスの耐食性は単に「SUS304だから」「SUS316だから」と材料名だけで決まるものではありません。
製造工程において、どのような温度に、どのくらいの時間さらされたかという熱履歴も重要なのです。
✓ 固溶化処理で耐食性を回復させる
表面設計コンソーシアムのメンバーである武藤工業では、SUS304にさまざまな熱処理を行い、5%塩水への浸漬試験によって耐食性を比較しています。
その結果、1025℃で加熱後に急冷する固溶化処理を行った試験片では、約365時間の浸漬でも錆が発生しませんでした。
一方、応力除去焼鈍を行った試験片では錆が確認され、特に600℃処理では鋭敏化度も高い値を示しました。
固溶化処理は、析出したクロム炭化物を再び母相中に溶かし込み、適切に急冷することで鋭敏化を抑えるための重要な熱処理です。
✓ ステンレスの「錆」は熱履歴まで考える
ステンレス部品に錆や粒界腐食が発生したとき、環境だけを原因と考えるのでは十分ではありません。
👉 材料、溶接、加工、熱処理、そして表面状態まで含めて原因を考えることが重要です。
表面設計コンソーシアムでは、メンバー企業である武藤工業の熱処理技術と、各種分析・評価技術を組み合わせ、ステンレス鋼の腐食や熱履歴に関するご相談にも対応します。
なぜ錆びたのかをキャラクタライズし、適切な材料・熱処理・表面状態を考える。
これもまた、私たちが目指す表面設計です。
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